上田交通の「丸窓電車」として親しまれた車両が、上田電鉄別所温泉駅構内、さくら国際高校、長野計器株式会社電子機器工場の3ヶ所で保存されています。
このうち、実見した上田電鉄別所温泉駅構内、さくら国際高校の2両についてご紹介します。
上の図で赤丸で示した場所が、保存されている場所です。
元々は2両ともが別所温泉駅構内で保存されていたのですが、痛みが大きくなってきたためモハ5251が解体し、5252のみを修復するという方向性に2010年に決まりました。
その際に5251の譲渡先を公募したところ、至近距離に位置する「さくら国際高校」が応募したため、それに決定したという経緯があります。
「さくら国際高校」への移設は2011年4月に行われました。
モハ5251 さくら国際高校
モハ5252 別所温泉駅構内
2両ともに、今のところ保存状態は良好と言えます。
ただし、覆屋などが架けられているわけではないので、劣化が進みやすい状態であると言え、この辺の問題を所有者がどのようにとらえるのかが、今後の展開を考える上で重要なポイントだと考えます。
冒頭に記したように、上田市には3両の「丸窓電車」が保存されています。
これは、同形式の車両を限られた地域の中で3両も保存しているという全国的に見ても希有な事例であると言え、それらをどのように保存・活用していくのかが、今後、宝の持ち腐れになるのか、それとも地域起こしの一助になるのかの分かれ目であると考えます。
同じものが複数あるときに、同じことを行っていてもさほど意味はありません。
やはり差別化が必要でしょう。
例えば、日常の車両展示の他に、3両を利用した回遊性のあるイベント、即ち個々の車両ごとに異なったメニューを行い、それらを巡るシステムを作れば、大きな集客効果が期待できるものと思います。
そのためには車両所有者や地域住民の協力が必要不可欠ですから、当該自治体である上田市、または観光協会などが中心となり、車両所有者、地域住民、自治体の三者一体型の運営である地域密着型の活動が相応しいものと考えます。