JR西日本奈良線稲荷駅は、明治12年8月18日に東海道線稲荷駅として開業。
その後、大正10年8月1日に同線の馬場駅(現:膳所駅)〜京都駅間の線形が現線形へと変更されたことに伴い、奈良線の所属へとなりました。
ランプ小屋は、下り線ホーム奈良方に隣接して比較的良好な状態で遺存しています。
古くから「国鉄最古の建築物」とか「最古のランプ小屋」という枕詞を付けられて紹介されることが多く、現地に設置されている解説板にも、そのように記されています。
さて、このランプ小屋が、今まで多くの書籍などで「明治12年の開業当初のもの」として紹介されていたのを、小野田滋氏が緻密な史料調査により否定(小野田滋「明治期における鉄道用ランプ小屋に関する考察 稲荷駅ランプ小屋の建設年代について」『土木史研究 講演集』26 2006年)されています。
筆者は、敦賀港駅に現存するランプ小屋について詳細な観察を行なっていますが、その結果と稲荷駅ランプ小屋を比較検討した結果、レンガの様相などから明らかに稲荷山駅ランプ小屋は、敦賀港駅ランプ小屋に後出のものと考えられる結論に達しました。
小野田氏による指摘から既に15年が経過していますが、ネット上などでも今だに「稲荷駅ランプ小屋を最古」とする記述が溢れています。
その多くが、現地解説板や過去の文献からの孫引きであるのは明白な事実です。
そろそろ、現地の解説板も書き改めた方が良いのではないでしょうか。