上野発、水上行きの優等列車として、まず最初に頭に浮かぶのは急行「ゆけむり」。そして、1980年代に入ってから登場した特急「谷川」ではないでしょうか。
急行「ゆけむり」は、1968年(昭和43)に登場し、1985年(昭和60)に廃止されるまでの17年間。
特急「谷川」は、1982年(昭和57)年に登場し、1997年(平成9)に「水上」に変更されるまでの15年間にわたり運転されました。
それに対して準急「ゆのさと」は、1960年(昭和35)から、1965年(昭和40)までの5年間という短期間の運行に終わってしまったことが、人々の記憶にほとんど残っていない理由の一つと思われます。
また、「ゆのさと」の写真を探すと意外と残されていないことがわかるのですが、こうした点も運転期間が短かったことや、数多い列車の中でも地味な存在であったことなどが、起因しているものと思われます。
写真1は、昭和40年9月に上野駅で撮影された下り「ゆのさと」。
同年10月1日からは「ゆのさと」が廃止され「奥利根」へ組み込まれていることから、「ゆのさと」末期の姿を捉えた貴重な写真です。
ここで注目してほしいのがヘッドマークを付けていること。『国鉄準急列車物語』(JTBパブリッシング 2012年)では、「末期にはヘッドマークが付かなくなった」と記され、ヘッドマークを未装着で岩本付近を走行する写真が掲載されていますが、本画像により、末期までヘッドマークを付けていたことがわかります。
画像1は、1964年(昭和39)10月時刻表から下り「ゆのさと」に運転時刻です。
下りは、上野10:08 水上12:46
上りは、水上13:13 上野16:00
停車駅は、上りも下りも同一でした。
この運転時刻を見ると、下りは朝ゆっくりと家を出て、水上到着後は観光後に旅館へチェックイン。
翌朝は、チェックアウト後に近隣観光をして昼食後に乗車、上野着は夕方前。そして宵の早い時刻に帰宅という行楽にはちょうど良い時間設定でした。
また、同じ水上行きの準急「みくに」と比較すると上野・高崎間の停車駅が大きく異なっており、停車駅の多い「ゆのさと」は、温泉への行楽輸送の他に、ビジネス向けの都市間輸送をも担うという二面性を有する準急であったことがわかります。