切手に描かれた860形蒸気機関車

外国の切手に日本の鉄道が描かれることは時々あります。
その中で最も多く取り上げられているのが新幹線で、蒸気機関車となると描かれることは少なく、たとえ取り上げられてもC62とかD51というポピュラーな車両であることが普通です。
ところが、1972年に南米のパラグアイが発行した「各国の古典機関車」という切手に取り上げられたのは、画像に示した860形という極めてマイナーな車両でした。

本機は、鉄道庁汽車監督であったイギリス人R. F. トレビシックが設計・製作を担当し、1892年(明治25)10月に官設神戸工場で起工し、多くの日本人技術者の手によって、翌年5月に完成しています。

1B1という車輪配置、外観、寸法などは基本的に400形の流れを酌むものでしたが、構造的には、当時イギリスで流行っていた2シリンダー複式という先端技術を採用していました。
ところが、この先端技術の採用が本機を不運の機関車にしてしまったのです。

完成後の本機は、神戸・京都間で使用され、500形、600形との性能比較が行われました。それによると、年間で15〜20パーセントほども石炭消費量が少なく結果は良好であったそうですが、複式シリンダーの運転が難しく、現場ではあまり歓迎されない機関車であったそうです。
本機が増備されずに1両で終わってしまった背景には、こうした現場の事情があったものと考えられます。

その後、本機は1918年(大正7)3月23日に樺太鉄道庁に入線し、10年ほど使用されたのち1929年(昭和4)3月末に廃車となっています。

本機は、国産第1号の蒸気機関車という鉄道史はもちろんのこと、近代日本の歴史や産業技術史の上で極めて重要な車両であったにも関わらず、長い間見向きもされず、気がついた時には廃車となってしまっていました。
もし、仮に現存していたとしたら日本の鉄道史上欠くことのできない車両として、国指定文化財に指定されていたことと思います。